安全について



 老前整理で考える安全とは、ものにつまずいて転ばないようにということだけでな

く、快適で、できるだけ自立した生活が長く続けられることにもつながると思ってい

ます。

それが「健康寿命を延ばしたい」であり、これからどう生きるかだと考えています。




健康寿命を延ばしたい

 老前整理で身の回りをスッキリして健康寿命が延びたら、一石二鳥だと思いませんか。

私は決して無関係ではなく、つながりがあると思っていますので、今回は老前整理と

からだの話です。

はじめに超高齢社会の現状を見てみましょう。決して無関係ではなく、日本の平均寿

命は、2015 (平成27 )年現在、男性80.75年、女性は91.35年です。しかし本当に気

になるのは健康寿命ではないでしょうか。健康寿命(healthy life expectancy)と

は、一般的には介護を必要としないで自立した生活ができる期間を指します。

日本人の健康寿命は2013(平成25)年時点で、平均で男性が71.19年、女性が74.

21年となっています。

統計年の違いはありますが、男性で9.56年、女性で1.14年は日常生活に制限のある

暮らし、つまり介護を受けたり、それまでのように自由に暮らすことができなくなっ

ているのです。逆の見方をすれば男性71歳、女性74歳までは制限のない日常生活を

送っているということです。

この年齢まではおそらく、健康のために適度な運動を心がけたり、食生活にも注意し

ておられる方が多いと思います。ここで介護が必要になった方たちにどのような問題

が起こっているのでしょう。その原因を見てみましょう。

原因(%)

男性

女性

脳血管疾患(脳卒中)

26.3

12.6

心疾患(心臓病)

5.1

4.5

関節疾患

4.7

14.1

認知症

14.1

17.6

骨折・転倒

6

15.4

高齢による衰弱

11.1

15.3

その他・わからない

32.6

20.6


 男性では脳血管疾患が1位、26.3%、2位は認知症、3位は高齢による衰弱です。女

性の1位は認知症、2位は、骨折・転倒、3位が高齢による衰弱です。ここで女性の2

位の骨折・転倒に注目してください。

 次に女性の骨折、転倒について具体的な資料をみてみます。

 東京消防庁の救急搬送データからみる日常生活の実態調査では、高齢者の事故の特

徴は、「ころぶ」事故が全体の81.5%を占めています。

高齢者の事故別構成割合(その他、不明を除く)

ころぶ

51,488人

81.50%

落ちる

 6,863人

10.90%

ものが詰まる

1,703人

2.70%

ぶつかる

1,337人

2.10%

おぼれる

535人

0.80%

切る・刺さる

533人

0.80%

はさむ・はさまれる

323人

0.50%

かまれる・刺される

254人

0.40%

やけど

211人

0.30%

平成28年度 72,198人

救急搬送





また、「ころぶ」割合も年齢と共に増加しています。高齢になるまでは「ころぶ」こ

とがそれほど重大な事故につながるとは思いもしません。

しかし高齢になってころぶと、39%、およそ10人に4人が「生命の危険はないが、入

院の必要がある」中等症です。この入院がどれほど重大な意味をもつかおわかりでし

ょうか。

 「ころぶ」事故の発生場所は、住居などが最も多く、次に道路・交通施設となって

います。住居などでの「ころぶ」を屋内と屋外に分けてみると、屋内の発生が九割以

上を占めています。そして住宅の屋内だけで、転ぶ事故の全体の五割以上を占めてい

ます。

また、住宅などで発生の多かった転んだ場所一〇か所を見ると、居間や寝室が最も多

く、次に玄関や廊下などとなっています。

 

 「ころぶ」事故防止対策とし東京消防庁ではて次のような対策を挙げています。

・段差をなくしましょう。

・時間に余裕をもって行動しましょう。

・足元を十分に明るくしましょう。(足元灯、照明器具の設置など)

・滑り止めをしましょう(階段・廊下・玄関先など)

・歩行を補助するものを活用しましょう(手すりなど)

・継続できる、適度な運動をしましょう。

・ころぶ原因となるものは取り除きましょう(整理・整頓)


「段差をなくす」が対策にあるのは、日本の住まい特有の敷居、玄関の上り框(かま

ち)などで、若いころには存在さえも気にしていなかったわずかな段差につまずくか

らです。この段差の対策は「すりつけ板」を設置し、床面と敷居の段差は5ミリ以下

とします。

「時間に余裕をもって」は、出かけるときなどにあわてて転んだりすることが多いか

らです。準備は早めに、ぎりぎりでなく時間の余裕を持って動くことがトラブル防止

にもなります。

「足元を明るく」というのは、昼間はもとより、夜間トイレに行くときに足元が暗い

と転びやすく、危ないからです。

「滑り止め」は、階段、廊下などにつけておいた方がよいですね。

「歩行を補助するもの」とは、手すりなどのことです。階段や廊下など滑りやすい、

バランスをくずしやすい所に設置しましょう。

「適度な運動」は、体力の衰えを防ぐために必要です。

そして最後の「ころぶ原因となるものを取り除きましょう」については老前整理にと

ってとても重要なポイントです。次の項の安全に関わるポイントの中で、合わせて考

えてみたいと思います。



老前整理と安全に関わるポイントは次の3つです。


1、床のものを減らす


2、高い所のものを減らす


3、どこに何がどれだけあるか、把握すること(管理)



1、床のものを減らす

 床にものがあることで転倒の危険が挙げられます。ころぶのは滑って体のバランス

を崩すことだとお分かりでしょう。

 そのために手すりをつけることも有効です。階段や廊下、滑りやすい場所には歩行

を補助するもの、手すりの設置を考えてください。

 転んでからでは遅いのです。また「まだまだ元気だからだいじょうぶ」と思われて

いる人も多いでしょうが、バランス感覚は衰えていませんか。

 また「転ぶ」ことが「入院」から「寝たきり」につながる可能性もあるのです。



                                   

2、高い所のものを減らす

 天袋や、台所の吊戸棚など、踏み台に乗らなければとれない収納場所のものを減ら

しましょう。高い所にあるものは普段使わない=使う頻度が低いものです。これから

の暮らしに必要か、一考の余地ありです。

 突然、五十肩になるなど腕が上がらなくなると、ひとり暮らしでは、人の手を借り

なければ出せなくなります。

 理想は天袋に何も入っていないことです。一度には無理でしょうが、少しずつ減ら

してください。

 また家の外にも高い所の問題があります。


庭木の手入れ

 高い所は家の中だけでなく、家の外にもあります。70代の男性Tさんの両親が、庭

にたくさんの木を移植しました。その中に15本のイチイ(一位)の木がありました。

イチイはアララギとも呼ばれる常緑針葉高木で、大きいものは高さ25メートル、直径

2メートルに達します。赤い実がなり、建築や器具、彫刻などに使われる木です。

 90歳で亡くなったTさんの母は15年間、85歳まで脚立に上りイチイの木の剪定

を続けました。

 その後Tさんが作業を引き継ぎ、自分も85歳まで続けるつもりでしたが、後を継い

でくれる人がいない。この木は3年間剪定を怠ると枝が暴れて手の施しようがなくな

るそうです。そこでつらい決断をしました。

 10年後の庭を想定して15本あった木を一本ずつすべて伐採したのです。

直径2メートルもある「大木の伐採は思ったよりも大変な肉体労働で時間もかかりま

した。Tさんの庭のように大木がある家は少ないかもしれませんが、それでも木の剪

定は必要でしょう。

 いくつまで脚立に上って作業ができるか。作業を継いでくれる子どもや家族はいる

か。剪定ができなくなった時に専門家に頼むとしたら費用がかかることも考えておか 
ねばなりません。わたしたちは今とこれからを考える必要があるのです。



3・低いところのものが取れない

 3つ目は低いところの問題です。、腕だけでなく、膝や腰が痛いと曲げられなくて

床下収納の中のものが出せないということもあります。

 また膝のせいで階段が上がれなくなり、2階に置いてあるものは使えず倉庫になっ

てしまったという家もあります。

 このような場合、家族がいれば、頼むこともできますが、ひとり暮らしではどうで

しょう。また夫婦が共に高齢の場合はどうでしょう。

 無理をするのは危険ですね。またこれから先ひとり暮らしになる可能性もある、そ

うなった場合の暮らしもどうなるだろうかと想像力を働かせていただきたいもので

す。

老前整理の極意』より                 

                                              



問題別取り組み方


なぜ片づけられなかったか理由

・50歳からの暮らしを創造する ⇒老前整理のナッジA(自分史年表)

・家族のコミュニケーション⇒老前整理だからできる

・このままではものは増えるばかり⇒なぜ老前なのか

・未経験の老いることへの対策⇒老いを受け入れる

・「いつかやろう」を解決する⇒老前整理のナッジ@(カレンダー)

・安全について⇒暮らしと安全

・災害について⇒災害への備え

・ひとり暮らしになったら⇒老前整理をするために

・子どもたちに託すこと⇒仏壇や墓のこと

・子どものいないご夫婦⇒2人で今後の計画を立てる

・高齢の親の家の片付け⇒ゴミ屋敷にならないか心配!

・親の介護中⇒介護をしている人ほど、自分を大切にしよう!

・家族の遺品整理は一筋縄ではいかない⇒「もの」の整理「心」の整理

・空家で困っている⇒実例紹介
     
         ⇒空家の相続問題⇒売った時の特例

・体調がわるいとき⇒焦らない

・男性の老前整理⇒はじめの一歩

・ストレスに気づく⇒解消法は?