家族の遺品整理



遺品整理とは? 「もの」の問題

 遺品整理というと、どのような光景が思い浮かびますか。ひとことで言えば、遺品

整理は親や家族が亡くなった後に、故人の荷物の整理をすることです。

 いつしなければならないという時期に決まりはありませんが、いつまでもそのまま

で放置するわけにもいかないでしょう。そして遺品整理には「もの」の整理の問題と

「心」の整理があります。  

「もの」の問題を考えるに当たり、他にも条件や環境、家族の問題によって、考えな

ければならないことがありますここでは次のような

問題を挙げています。



1、「もの」の整理

2、持ち家か賃貸か

3、親子の住まいの距離の違い


        @親と同居していた   ア、子どもの頃からで、成人しても同居

                    イ、親が高齢になったので同居

        A近所に住んでいた

        B遠方(日帰りは無理)

4、整理を実行するにあたり

5、誰がするか

6、具体的な手順   

  @確認する

  A一部屋ずつ整理する

  B手紙や日記など個人的なもの、価値のわからないもの

  Cごみの処分




1、「もの」の整理

 老前整理を始める理由に、親の遺品整理をした経験から、自分の子どもにこのよう

な思いをさせたくないという人も少なくありません。

 なぜ遺品整理がそれほど大変なのかといえば、まず膨大なものの量です。

 押入れやタンスの中に入っているものを全部出してみると、トラック数トン分はあ

たりまえと言っても過言ではありません。

 ここでは、親の遺品整理の問題と実行法についてです。

 この何トン分もの遺品をすべて見ていくにはどれほどの時間とエネルギーが必要で

しょう。

 なぜ細かく見なければいけないかというと、どこに何が紛れているかわからないか

らで、一番多いのは現金です。

 へそくりや何かのお金を封筒に入れてどこかにしまいこんでいたり、貴重品や通

帳、印鑑などもどこにあるかわからない場合がほとんどです。

 そしてこの作業は、親のプライバシーを侵すことになり、知りたくなかったことも

知ることになります。 

 葬儀のようにある程度、儀式としての段取りが決まっていれば、それにしたがって

進めていけるのかもしれませんが、決まりのない遺品整理はそう簡単ではありませ

ん。

 いざ自分の身に降りかかってくると、遺品整理がどれほど大変で心身を消耗させる

ものであるかに驚かれると思います。

 老前整理をする動機の一つに、親の遺品整理を経験し、このようなつらい思いを子

どもたちにさせたくないからということがあるほどです。

 最近では遺品整理の仕事がテレビのドラマになるなど注目が集まっているのは、そ

れだけ身近で深刻な問題だからでしょう。

 人生五〇年といわれ、ものが少なく貧しい時代にはここまでの苦労はなかったと思

います。

 しかし平均寿命が伸びて豊かになった今、家の中にものがどれだけあるかを考えて

いただくとおわかりでしょう。

 もし現金や貴金属など貴重なもの、高価なものが多く家の中に眠っていれば宝探し

の感覚でわくわくするかもしれませんが、多くの場合は「どうしてこんなものを取っ

ておいたのか」と疑問に思うものが多いのです。

 「もったいない」とものを大切にすることを信条にして育った世代には、「捨て

る」ということができず、多くのものに囲まれてしまい今に至るのです。

 その上、親子といえども予想もしていなかったものや、知りたくないことまで知ら

されることもあります。

 それだけならまだしも、兄弟や親せきなどがからむ遺産の問題があります。

 処分の方法について意見が合わなかったり、勝手に始末したと責められたりするこ

ともあるでしょう。

 遺言があったり生前にきちんと相続の手配がされている場合は問題ないでしょう

が、多くの方はそこまで考えていませんので、後々家族、親族が揉めることも少なく

ありません。

 亡くなった家族への思いで辛くて片付けられない場合、親族の問題、誰が片付ける

のか、このように遺品整理はさまざまな問題があり、なかなか進まないのです。

では、次に具体的な話に移りましょう。



2、持ち家か賃貸か

 遺品整理においては持ち家か賃貸かで対応が分かれます。一人暮らしの親の家が賃

貸ならば大変です。

 それは家主からなるべく早く明け渡してほしいといわれることがあるからです。

 貸す側にすれば、人が住まない空き家は防犯面からもなるべく早く片づけて明け渡

してほしいものです。一週間あるいは一か月と期限を切られる場合もあります。

 また家賃の支払いの問題もあり、賃貸の場合は待ったなしです。悲しんでいる暇は

ありません、とにかく早く片づけなければならないのです。

 親が亡くなれば通夜に葬儀、四十九日とあわただしい日々を送る子どもにすれば、

それに加えて家の片づけがのしかかってくることになります。

 もし親の家から遠い場所に住んでいれば仕事を休んだり、家を空けて来なくてはな

りません。それも一日や二日では到底片づきません。

 遺品整理の業者に依頼すると費用もばかになりません。また業者に頼んで片づけば

万々歳と思う人はすっきりしますが、親の荷物を人任せにしてしまったと親不孝を気

に病むもいます。

 介護もそうですが残された家族で、相手のことを想い、一所懸命しようとした人ほ

ど、「これで良かったのか」という思いが残るのです。

                                                                       



3、親子の住まいの距離の違い

 親の遺品整理をする場合、親子がどこに住んでいるか、その距離によって次の三つ

のパターンが考えられます。

@親と同居していた

  ア、子どもの頃からで、成人しても同居

  イ、親が高齢になったので同居

A近所に住んでいた

B遠方(日帰りは無理)

そこでそれぞれのケースについて、どのようなことが起こりうるかをみていきましょう。

@−ア、 子どものころから親とずっと同居していた場合

 いっしょに暮らしていたから親のことを何でもわかっていると思われるかもしれま

せんが、案外、知らないことも多いものです。お互いに言わなくてもわかっていると

思うことや、逆にお金のことなど言いたくないという場合もあります。またいっしょ

に住んでいるからといっても、お互いのプライバシーを尊重していれば、押入れやタ

ンスの中のものまで見ることはないでしょう。

 距離が近すぎて、かえって言わないこともある。親子の関係、つまり会話やコミュ

ニケーションの有無にもよるでしょう。

 親子の関係がうまくいっていた場合は、つらくてなかなか片づけられない場合もあ

るかもしれません。またこの場合、先に亡くなった親の遺品もそのままになっている

場合が多いので、子どもにすれば両親、つまり二人分の遺品を片付けることになりま

す。心の整理をする時間も必要になるでしょう。



@ーイ、 親が高齢になったので同居

 親が高齢のために同居をする場合は、つまり子どもが実家に帰るときと、子どもの

もとへ親が越してくるケースがあります。

 田舎の大きな家に子どもが戻ると、まずものの多さに驚くでしょう。

 納屋や納戸、蔵があるという家もありますし、そこには親どころか先祖代々のもの

が眠っている。また高齢の親はそのような代々のものを手放してはご先祖様に申し訳

ないと思っているので、手をつけていない。かといって高齢で自分の身の回りのこと

も十分にできなくなった親に片づけろとも言えないので、結局親が亡くなった後に片

づけることになります。

 生前にそのようなご先祖のものなどについて話をしていれば対処もできますが、話

ができていなければ一から片づけることになります。

 子どものもとへ親が引っ越してくる場合は着替えなど身の回りのものだけでしょ

う。つまり田舎の家はそのまま残っています。そして、子どものところで親が亡くな

ってから田舎の家をどうしようかということになります。



A 近所に住んでいた( もしくは日帰りできる距離)

 同居していた場合と違い、近所に住んでいると家の状況もわかりつつ、ある程度客

観的にみられますので、精神的には楽かもしれません。そうすると何が問題かという

ことがわかりやすいのです。

 また片づけに通うのも近ければ往復の時間がそれほどかからず、遠距離で通うのと

は違うので時間も取りやすく、急がなければ自分たちのペースで進めることができま

す。それに近所に住んでいればゴミの分別や処分方法もわかっているのでやりやすい

かもしれません。無理をせず計画的に進めるのがよいでしょう。



B 遠方( 日帰りは無理)

 遠方に住んでいる場合はいちばん頭が痛いと思います。

まず、子どもたちの多くは都会で仕事を抱えているので、片づけに帰る時間がとれな

い。その上、長期間の休みが取れない。兄弟でお互いの時間調整ができないなどな

ど、遺品整理のハードルが非常に高くなります

 また、たとえ少しでも片づけようと思っても、長年その土地を離れていると、ゴミ

をどう分別してどこに出せばいいのかわからない。もしくはゴミを出せる日が限られ

いるので出せないなど、さまざまな予期せぬ問題が出てきます。

 ましてや海外に住んでいるとなれば、お手上げです。時間が取れない、片づけに帰

れないとなると、遺品整理は業者に依頼することになります。

 この場合も、どのようにしてもらえるのかが気になるところです。貴重品が出てき

たらどうするか、思い出の品をどうするか、指示もしくは打ち合わせをしておかない

と、後からでは取り返しがつきません。

 もちろん遠方ですから、メールや電話のやり取りで進めることになります。信頼で

きる業者かどうかの確認も必要で、金額も気になります。相場がわかりにくいし、高

くても迷うし、安すぎても不安になります。

 問題はまだ続きます。ひとり暮らしの親が亡くなった場合は、その家をどうするか

も決めなければなりません。

 賃貸なら部屋を空ければすみますが、持ち家、それも何代も続く家となるとどうで

しょう。そのまま放置するのか、今後、誰かが住むのか。空き家にしておけるのか。

 もし空き家にしておくとすると庭の雑草は伸びるし、部屋に風を通すことも必要に

なります。

 家の管理は誰がするのか、誰が責任を持つのか、あるいは売却をするのか。

 とりあえず様子をみるとしたら水道や電気はどうするのか、名義は変更するのか、

料金の引き落とし口座はどうするか。管理や手続き、防犯の問題もあるのです。

                                                                     



4、整理を実行するにあたり

 どのような流れになるか考えてみましょう。

 まず家族、親族など必要な了解をとる。これは後々揉めないための予防策です。ま

た形見分けなどは事前にすませておいた方がよいでしょう。そうでないと、後から、

泥大島のきものがほしかったのにと言われても取り返しつきませんし、故人と生前に

蔵の中の掛け軸をもらう約束をしていたといわれても確かめようがありません。この

ようなことで親せきづきあいが途絶えてしまった例もあります。

 また隣近所の方にも人が出入りするとご挨拶をしておいた方が良い場合がありま

す。

 そうでないと隣の空き家に見知らぬ人が出入りしていると、警察に通報される可能

性もあるからです。

 またゴミの処分法も調べておいた方がよいでしょう。その場合に、ゴミを運ぶ車の

手配も必要ですし、家の前に車を置けるか、狭いところでトラックなどの大きな車が

入らない場合もあります。つまり遺品を整理しながら、どのように運び出すか、どこ

へ持って行くかまで考えないと片付かないのです。



5、誰がするか


 一人で行うよりは、誰かに手伝ってもらうことが望ましく、その理由が三つあります。

 まず最初の理由は単純です。一人よりは二人か三人の方が効率的だからです。重い

家具や電気製品を運ぶなど一人では難しいこともあります。タンスの裏など家具を動

かしてみる必要も出てきます。ただあまり人数が多すぎると、ものは片付きますが、

それぞれが勝手なことを言い出すと、まとまりが付かなくなる可能性もあります。

 また、残すか捨てるかの判断が一人ではつかないこともあるからです。

 これに加えてもう一つ大きな理由は、一人で片づけていると思い出の品を見て気が

滅入り、精神的につらくなることがあるからです。

 もし一人で片づけるならば、現実は理想通りにはいかないので、長時間がんばりす

ぎないことです。

 この時間は集中してやろうと、時間を決めたほうが、能率が上がります。

 また予想よりも時間がかかることを覚悟しておいたほうがよいでしょう。なぜな

ら、引っ越しならばものを箱に詰めて運び、転居先で荷物を出し、並べ、納めるとい

う決まりきった作業ですが、遺品整理は一人ひとりのケースによりまったく違う作業

となるからです

 最後の理由は兄弟姉妹など複数ですれば話ができるからです。といっても世間話で

はありません。故人のものを片づけながら、思い出を語るのです。

 通夜や葬儀では話題にのぼらなかったようなこと、些細なこと、忘れていたことな

どです。自分の知らない話を聞けるかもしれません。兄弟といえども、知らないこと

もたくさんあります。古い写真が出てくることもあります。

 それを見て、反抗期の弟を両親はどのように思っていたか、兄が教えてくれること

もあるでしょう。

 姉も知っていると思っていたことが、妹しか知らないことだったり、このような機

会でないと話せないことやわからないこともあるのです。

 古びたお菓子の箱の中から、自分たちが子どもの頃に親にあてて書いた手紙が出て

きたらどう感じるでしょう。そういえば…という話は、たぶんこのときにしかできな

いのです。

この機会を逃さないでください。                                          



6、具体的な手順   

@確認する

 遺品整理の順番は、はじめに重要な書類や貴重品がありそうなところをみます。こ

れは金庫や手文庫などすぐにわかりそうに思われますが、長年離れて暮らしていると

わからないことも多いものです。また預金通帳、印鑑なども確認しておきます。

 大量のごみの処分については、すべて業者に依頼するか、自分たちでできるだけ処

分して大きなものや特殊なもののみ業者に依頼するかを決めましょう。その費用は

が払うのかも予め決めておきます。ごみを入れる袋(大量に必要)もしくはダンボー

ルの箱などは、事前に用意しておきます。地域により既定の有料の袋でないとごみを

引き取ってもらえない場合もありますので、確認が必要です。



A一部屋ずつ整理する

 座卓やこたつなど床に置かれたものを他の部屋に運び出し、ものを広げるスペース

を作ります。床にシートなどを敷いて、ここでタンスや茶棚、押入れなどのものを出

し、仕分けをしていきます。シートを敷くのは、ほこりや髪の毛、虫、ゴキブリの死

骸などいろいろなものがいっしょについてくるので、後の掃除をラクにするためで

す。

 次はタンスなどから出したものを「使う」「着る」「捨てる」「保留」と分けてい


き、不要なものはそのままごみ袋や箱に入れていきます。

 仕分けをするときには、衣類なら背広や洋服のポケットなどに何かものが残ってい

ないかを確認します。書類なら封筒の中身まで見ましょう。

 整理タンスの中から封筒が出てきたり、食器棚からネックレスが出てくることもあ

りますので、しっかり見ていく必要があります。そうした封筒に現金を入れたまま忘

れている場合も多々あります。

 あるお宅では表に鉛筆で「へそくり」と書かれた一見くたびれた封筒から六〇万円

の現金が出てきたそうです。家族の方はへそくりと書いてなければ、そのまま捨てて

いただろうとのことでした。額の裏なども念のために確認してください。

 タンスの中身を全部出したら、裏に何か落ちていないか、引き出しの裏にへそくり

の封筒を張り付けていないか、一つひとつ確認します。

 古いタンスや鏡台の引き出しに隠れた引き出し(盗難予防もしくはへそくり用)が

ある場合もありますので、そこに貴金属やお金をしまいこんでいないか見ておく必要

があります。

 このような隠し引き出しやスペースを知らない男性は多いでしょう。また子どもで

も知らない場合の方が多いと思いますが、女性が見られたくないものを隠す場所とし

て昔から工夫がされていたようです。



B手紙や日記など個人的なもの、価値のわからないもの

 片づけていればたくさんの手紙や日記が出てくる場合もあります。そうした個人的

なものをどうするのか迷う人も多いようです。

 読みたいけれど、親といえども故人のプライバシーを侵すことはしたくない。たし

かにそういった面もありますが、あまり神経質にならずにざっと目を通されてもよい

と思います。

 昔なら古い手紙類はたき火で焼いたのでしょうが、現在ではできませんので、個人

情報が含まれているものはシュレッダーにかけるのが得策かもしれません。またゆっ

くり読みたいと思うようならば、別に保管しておきましょう。

 趣味のものや骨とう品など、自分たちでは価値のわからないものは専門家に尋ねる

のがよいでしょう。また処分するならば、引き取り手がないかを聞いてみるとよいで

しょう。



Cごみの処分

 これもみなさんが頭を悩ます問題です。燃えるごみ、燃えないごみ、粗大ごみ、引

き取ってもらえる家電製品とそうでないもの。分別の仕方は地域によって違います。

この分別も面倒で時間がかかります。

 台所用品等、これはガラス、プラゴミ、金属、このスプーンは柄の部分が木製だ

し、どっちに入れればいいのだろうかと、迷うので時間がかかるのです。

 またゴミとして出すには忍びないと思われるものもあります。ご相談が多いのは写

真やアルバム、人形の類です。これらは、納めさせてもらえる近くのお寺などにご相

談されることをお勧めしています。

 時間もかかり体力もいることですが、一つひとつのものに向き合う作業が故人と向

き合うことになります。二度と会えないことを改めて理解し、別れを告げる作業が

品整理なのです。

『心と暮らしを軽くする『老前整理』入門』より             



問題別取り組み方


・なぜ片づけられなかったか⇒理由

・50歳からの暮らしを創造する ⇒老前整理のナッジA(自分史年表)

・家族のコミュニケーション⇒老前整理だからできる

・このままではものは増えるばかり⇒なぜ老前なのか

・未経験の老いることへの対策⇒老いを受け入れる

・「いつかやろう」を解決する⇒老前整理のナッジ@(カレンダー)

・安全について⇒暮らしと安全

・災害について⇒災害への備え

・ひとり暮らしになったら⇒老前整理をするために

・子どもたちに託すこと⇒仏壇や墓のこと

・子どものいないご夫婦⇒2人で今後の計画を立てる

・高齢の親の家の片付け⇒ゴミ屋敷にならないか心配!

・親の介護中⇒介護をしている人ほど、自分を大切にしよう!

家族の遺品整理は一筋縄ではいかない「もの」の整理「心」の整理

・空家で困っている⇒実例紹介

         ⇒空家の相続問題⇒売った時の特例

・体調がわるいとき⇒焦らない

・男性の老前整理⇒はじめの一歩

・ストレスに気づく⇒解消法は?