高齢の親の家の片づけ


ゴミ屋敷にならないか心配! 

まず親の家にどのようなものがあるか、確認してみましょう。

ゴミ屋敷チェックシート

チェック
品物

サイズが合わない靴や洋服がたくさんある

贈答品が箱に入ったまましまわれている

使われることのない電化製品がある(ミシン、ポット、扇風機など)

来客用のl高級食器が必要以上にある

紙袋やビニール袋が100枚以上ある

使われていないきれいな箱やかわいい缶がある

押し入れに使われることのない布団がある
             
 実家に帰った時に、この項目にあてはまるものがないか確認してみましょう。チェックが多ければ多いほど、実家がモノで溢れかえらないように注意する必要があります。

老前整理のセオリー』より


長期戦の覚悟が必要

 高齢の親の家の片付けは、たぶん遺品整理よりも大変だと思います。

 なぜかといえば、遺品整理は膨大なものと思い出を片付けていくことですが、親の家は、親との戦いともいえます。

 そんな物騒なと思われるかもしれませんが、ものを捨てたくない親と、ものを捨てないとゴミ屋敷になる事を恐れる子どもの攻防になるのです。

 自分の家、自分のものなら勝手に処分もできますが、親の家、親のものとなると話が違います。親子といえども勝手に処分はできず、一つずつ了解を取り、本人が納得したうえでないと処分できないからです。長期戦になることも覚悟してください。


ショックを受ける

 遺品整理であれば、持ち主はもういませんから判断は片付ける人間に一任されます。しかし、高齢の親の片付けは一筋どころか二筋縄でもいきません。

 まず遠くに住んでいる、仕事が忙しいからと生家に帰るのもままならない状態が続いた場合、家に帰ってみるととんでもないことになっていたということも往々にしてあるのです。

 電話の「元気で暮らしているから大丈夫」という言葉にすっかり安心してしまうのです。

しかし、実際の家の中は物が散乱し、足の踏み場もないほどになっていたりします。特に高齢でひとり暮らしを続けていると、その状態が当たり前になってしまいます。

 若い頃はあんなにきれい好きだったのに。整理整頓にやかましい人だったのに。洗濯ものや洋服がタンスに納められずにあちこちに山積みになっているかと思えば、洗濯してないものも混じっているようだ。

 新聞もテーブルの上に乱暴に積み上げたまま。いや、積み上げてあればまだいいほうかもしれません。流し台の汚れた食器もそのままで、ゴミにしか見えない物が、袋に入ったまま放置され、いやな匂いがする。

 また、何が入っているかわからない紙袋や白いビニール袋が部屋のあちこちにある。袋の中には食べかけのお菓子や死んだゴキブリまで入っていて、中をのぞいてぎょっとする。

 スーパーのビニール袋が大きなごみ袋何枚分もあって、信じられないと思われるでしょうが、こういうケースはまれなことではありません。しかし、こんなことを他人様には恥ずかしくて言えず、悩んでいる人が多いのが現状です。

                                        


「もったいない」の結果

 なぜこうなるのかという原因は食器棚や収納庫にものをしまわないからこうなるのかと思えば、それだけでもない。

 そこには数々の鍋やガラス瓶、プラスチック容器、紙袋が物入れの棚を占領している。これらを使いきるのに何年かかるのだろうか。また変色していたり、古くなったものまでご丁寧に残してある。古い洋服も捨てられない。

 そのまま捨てるのはもったいないので洋服も雑巾にするというが、段ボールの箱に雑巾は山ほどあり、使った形跡もなく、部屋の中はほこりがたまっている。

 なぜ、そのようなガラクタまで残してあるのでしょうか。一番の理由は「もったいない」です。戦後のもののない時代を過ごしてきたのだから、まだ使えるものを捨てるなんてもったいない。お菓子の箱もきれいな包装紙やリボンも使えるのだから捨てられない。粗末にできない。

 わたしたちの多くは、自分が老いるとは考えたくない、まだまだ元気だと思いたいもの。他人の老いは目についても、自分の老いはなかなか認められない。どこかで線を引かないとものは溜まるばかりなのに、「いつか」、「そのうち」で気がついたらどうにもならない状況ということではないでしょうか。

 これは気持ちの問題だけでなく、体調も関係しています。

 若い頃と違って、雨の日や寒い日は膝が痛むとか、外へ出るのがおっくうだとか、行動もその日の天候や体調に左右されます。暑い日は熱中症にならないように気をつけなければとか。寒ければ寒いで、風邪をひかないように、雪で転んではいけないと外出を控える。

 また、あれをしようこれをしようと思っても、すぐに身体が動かない事もままあるでしょう。こんなことが重なると、おっくうになり、ますます片付けができなくなります。

 というより、もうそんな事はどうでもよくなるのかもしれません。これは怠けているのとは違います。また、いわゆるゴミ屋敷とは違います。またご本人もそんなことを言われれば「とんでもない」とおっしゃるでしょう。

一度こういう状態になると、これを元に戻すのには何倍ものエネルギーが必要になります。「誰かに助けを求めれば」と言うのは簡単ですが、家の中のことで他人には体裁が悪い、かといって息子や娘には迷惑をかけたくない。そもそもそれができるくらいならこのような状態には陥らないでしょう。

 体の面で付け加えれば、視力の問題もあります。だんだんに細かい文字が見えにくくなっている。食品庫の中の干椎茸や缶詰など食品の賞味期限の数字が読みにくくなっているかもしれない。

 部屋の隅のほこりもよく見えていないかもしれない。ゴミにも気付かなくなっているかもしれない。そして慣れてしまうと、それが当たり前になってしまう。

 しかし、離れて暮らす子どもが久しぶりに実家に戻ると、なぜこうなってしまったのか全く理解できない、私の親はどうなってしまったのかと思うのです。

 ご本人に言っても、「わかった」とか「そのうち」とかで、うるさく言うと、怒り出す始末で手におえないこともしばしばあります。


ゴミが出せない

 またゴミを処分したいと思っても、今の分別の方法が分からなかったり、普通のゴミでは出せないもの、大きなもの、重いものをどうすればよいのかわからない。

 もちろん、パソコンを使う世代ではありませんから、回覧板や市の広報など情報も限られています。

 出す日を間違って、ご近所の人に嫌味を言われたから二度と出さないとか、ささいなことで今までできたことができなくなり、途方に暮れながら、月日ばかりがたっていくという場合もあるのです。

 このように若い人にとっては何でもない事が、高齢になるととてもやっかいになってしまうのです。


片付けと始末

 始末というと、どういうことを連想されるでしょうか。辞書で「始末」をひくと、(物事の)しめめくくりをつけること、片付けること、処理。という意味が一つ。

 もう一つは、無駄遣いをしない事、倹約することとあります。そこで、親に片付けよう。始末しましょうと言った場合に、「冥土への準備」と思われる場合と、倹約の始末と取られる場合があります。

 高齢の母親に、ものが多すぎるから始末しようと娘が言うと、ほとんどの場合、「死ぬ準備をさせられる」とか「早く死んで欲しい」という遠回しの言い方だと誤解されます。

しかしこれも実の娘だから言えることで、嫁がこんなことを言おうものなら「うちの嫁は私に早く死んで欲しいのよ」とご近所に鬼嫁として吹聴されるかもしれません。ここが嫁姑の難しいところですね。

 ところで、娘が「始末」の話をしても、母親は良い顔をしません。もちろん、多くは口論になります。母娘ゆえの遠慮のない言葉というのもありますし、感情の問題もあります。

なぜ始末しなければいけないのか」「なぜ今のままでいけないのか」母親には納得のいかない事ばかりでしょう。

 そこで、何度も説明し、床にものが多くて転んでは大変だし、探し物にも時間がかかる。

 掃除の手間もあるでしょうなどと、なぜ始末しなければならないかを話さなければなりません。

 穿った見方をすれば、遺品整理が大変だから、今、片付けさせようとしているのだろうとか、財産目当てで、金目のものを持っていくつもりではないかというような妄想につながることもあります。

 こうなると疑心暗鬼になり、片付けどころではなくなり、親子の関係も危機に陥ります。

 このあたりも日頃の関係や、話の持っていきかたによると思います。また、何度も話し合うことも必要になります。ようやく古い洋服や着物を始末する段になっても、「もったいない」「まだ着られる」と元に戻したりして、「どうして?」と大声を挙げたくなることもあるでしょう。

 なぜなら高齢になると、次々に新しい洋服を買い替えるわけにはいきません。

 これは年金生活という経済的な問題もありますし、若い頃のように季節ごとにバーゲンセールに行けるわけでもない。つまりお金も機会も限られているので、ますます今あるものを大切にしなければという思いが強くなります。だから余計手放せないのです。

 また「始末」をするということは、自分の老い先が短いことを「認める」ことだと思う場合もあるようです。

 いわゆる「縁起でもない」というやつでしょうか。口には出さなくても高齢者はこのような話題には敏感です。

 そして一番強力なのが「思い出」です。思い出のあるものは、ぜひその背景の物語を訊いて下さい。

 何回も同じ話を聞く事になっても遮らずに聞いて下さい。そんなことをしている時間はないと思われるかもしれませんが、親孝行だと思い三回まではとにかく我慢して聞いて下さい。

 こうして話をしながら、思い出に向き合い、どうしてそれが捨てられないのか、どんな大切な思い出があるのか聞いてみてください。

 成人してから親とゆっくり話す機会がどれほどあったでしょう。特に男性は良い機会と思い、色々な話を訊いて下さい。このような機会でもなければ話をすることもなかったかもしれないのです。

 ここまでは高齢の母親つまり女性の話ですが、高齢の男性の場合は集めたコレクションに囲まれていたいという思いが強く、女性の手放せないとは少し意味が違うようです。

 それは蔵書だったり、自分が描いた油絵、レコード、写真、釣り道具などの趣味のものが多く、洋服や日用品などは少ないでしょう。これは男性のこだわりを表しているのかもしれません。

 また男性の場合これらのものを元気なうちに始末するという発想はなく、子どもや残った家族が何とかしてくれるだろうという楽観的な考え方が多いようです。

 このなんとかなるだろうタイプの人には、膨大なコレクションを今後どうするか尋ねてみること、つまりコレクションをだれがどのように継承するかです。

 永遠の命はありませんから、何時かはコレクションと別れなければならない日が来ることを覚悟してもらわねばなりません。高齢の親にそのような事を訊くのは残酷だと思われるかもしれませんが、山のようなコレクションを残されて始末に困るのは家族なのです。

 またその価値もわからず廃棄処分になってしまうことを想像してみてください。譲れるもの、譲れる人、処分の方法がわかっていれば、家族の負担は減りますし、貴重なコレクションを生かすことにもつながります。

                                                                      


さてどうしよう

 実際に親の家を片づけようとしたがうまくいかず、けんかになってしまった人も多いでしょう。

 この問題は非常にデリケートで難しい問題だということがお分かりいただけたでしょうか。

 なぜなら、自分が何かをするよりも、人に何かをさせるほうが難しいからで、子育てで苦労された方ならよくおわかりでしょう。また、あかの他人なら一定の距離を置きますが、親子となると遠慮がない分、お互いに容赦の無い言葉の応酬になります。これはきついですね。

 また高齢になると、もののあることが安心感につながります。子どもにはガラクタにしか見えないたくさんのものも親にしてみれば、人生の汗と涙の結晶なのです。加えて、前述のように片付けようと言うと、死につながると、微妙な問題になります。

 子どもにすればよかれと思っているのですが、親にすれば余計なお世話と受け取る場合も多いです。しかしそれでも、うちの親はこのままではとんでもないことになると思われる息子や娘が多いと思います。

 その場合にお勧めするのは食品から片付けることです。なぜなら、食品には消費期限があるので納得しやす

 消費期限については、表示の文字が小さかったり、インクが薄い、文字が分かりにくいところに書いてあると高齢者には見えない、わからないということもあり、視力の問題もからんできます。

 このようにまず食品からはじめ、次に使いきれない紙袋や保存容器。変色したもの、見るからに古いもの等を並べ、それぞれ、一〇個で足りないかどうかを聞いて、きれいなモノを選び、あとは処分しようと提案します。

 この段階で収納庫などに詰まった紙袋、瓶、容器が減ればかなりすっきりします。一〇個にするのが難しいなら、まず二〇個次に一〇個と時間をかけてください。

 これらはどちらかというと、それほどお金がかかっていないけれど 捨てるのがもったいないもの。今度はお金を出して買ったものに移ります。壊れている、もしくは使うことのない電気製品など。これらは安全性の問題と、処分するにも簡単ではないことを説明して下さい。

 手順として次は贈答品です。家で使えるものは使う。普段使っているシーツが古くなっていたら、新しいのを使おうと勧め、実際にシーツを替えます。使えないものはバザーやリサイクルに出すことを提案し、持って帰ってリサイクルできるものはして、出来ないものは処分してください。

 最後が衣類です。これが一番厄介かもしれません。まだ着られる、もったいないで、衣装ケースに眠っているものを出してみましょう。

 ここでは、サイズが合わない、シミや汚れがある、今ではとても着られないデザインなど、親子でファッションショーをするつもりで見ていきましょう。

 その時には全身が映る鏡があればなおよいですね。無理やりではなく、「納得」が一番の手放す方法です。時間はかかりますが、親子で話をする時間だと思って試してみてください。

 娘ならそれが出来ても、息子はそんなことできないとつぶやく男性も多いと思います。お気持ちはわかりますが、ファッションショーはできなくても、衣類やものを間にして会話をしてください。父と息子なら趣味の話もできるかもしれません。

最後に

 高齢の親の家を片付ける時は、親子の会話のチャンスだと思ってください。もしかしたら数年後には親は病床で話をしたくても出来なくなる可能性もあるのです。また親の今の状態を正確に知ることもこれからのお互いの生活設計に必要な事ではないでしょう。

『心と暮らしを軽くする「老前整理」入門』より
                                         


問題別

・なぜ片づけられなかったか⇒理由

・50歳からの暮らしを創造する ⇒老前整理のナッジA(自分史年表)

・家族のコミュニケーション⇒老前整理だからできる

・このままではものは増えるばかり⇒なぜ老前なのか

・未経験の老いることへの対策⇒老いを受け入れる

・「いつかやろう」を解決する⇒老前整理のナッジ@(カレンダー)

・安全について⇒暮らしと安全

・災害について⇒災害への備え

・ひとり暮らしになったら⇒老前整理をするために

・子どもたちに託すこと⇒仏壇や墓のこと

・子どものいないご夫婦⇒2人で今後の計画を立てる

高齢の親の家の片付けゴミ屋敷にならないか心配!

・親の介護中⇒介護をしている人ほど、自分を大切にしよう!

・家族の遺品整理は一筋縄ではいかない⇒「もの」の整理「心」の整理

・空家で困っている⇒実例紹介

・体調がわるいとき⇒焦らない

・男性の老前整理⇒はじめの一歩