第二は体力です。ものを動かすには力が要ります。今は元気で重いものを持ち上げられ
るとしても十年後、二十年後はどうでしょう。
持てなくなってからでは遅いのです。
またひとり暮らしの人からよくご相談いただくのは、タンスや大きな家具を一人で外に
運び出せないということです。粗大ごみで決まった場所に出せば、市町村などの自治体に
手数料程度で持って行ってもらえるけれど、はたしてその場所まで運べるでしょうか。
一人でタンスを動かすとか、二階から大きな家具をおろすとか、とてもんでおられる人
も多いようです。
このようなひとり暮らしの老前整理について、もしかしたらわたしもいずれひとり暮ら
しになる可能性があると思った方はありませんか。
他人事ではなく、このようにわがことに引き寄せて考えられるのが、三つ目の力の判断
力です。認知症の心配ではなく、これから先のことを見通す力、現状を客観的にとらえら
れるかどうかです。
人間は永遠に生き続けることはできません。つまり誰もが、少しずつ老いていくという
ことで、それを受け入れられるかどうかです。
ここで判断力について私が考えた3つのタイプを紹介します。皆さんはご自分がどのタ
イプに当てはまると思いますか。考えてみてください。
設定―山に登っていて突然、上から小さな石ころがコロコロと転がってきたとします。
A、「あれ、おかしいな、もしかしたら崖崩れか何かで大きな岩が落ちてくるかもしれな い」と、すぐ安全な場所 に避難する。 B、「これくらい平気平気、問題ない」と登り続け、ドドドと土煙を上げて落ちてくる岩 を見て、大変だぁ〜と慌て て逃げる。 C、小石どころか、岩が落ちてきているのにもかかわらず、「自分には当たらない」とた かをくくり登山を続け、痛い思いをしないとわからない。 |
いかがでしたか。つまり判断力とは、小石が落ちてきた時点で危ないかもしれないと考
え、行動できる力です。
また、片づけなければならない「ものの量」を登山の難易度だと仮定してみましょう。
山は早めに登り始める方が楽なのです。なぜなら片づけるものが少ないからです。
この山は現実の山と違って、先延ばしにすればするほど、より高くなり、ものは増え、
山の難易度は上がります。最後はエベレストになるかもしれません。
エベレストになると単独登山は難しく、シェルパと呼ばれる山岳ガイドの助けが必要に
なります。これと同じで、エベレスト級のものを片づけるには助けが必要になるというこ
とも頭に入れておいてください。
『老前整理の極意』より