【7、暮らしと安全】




老前整理で考える安全とは、ものにつまずいて転ばないようにということだけでなく、快適


で、できるだけ自立した生活が長く続けられることにもつながると思っています。


それが「健康寿命を延ばしたい」であり、これからどう生きるかだと考えています。






健康寿命を延ばしたい

 老前整理で身の回りをスッキリして健康寿命が延びたら、一石二鳥だと思いませんか。

私は決して無関係ではなく、つながりがあると思っていますので、今回は老前整理とからだ

の話です。

はじめに超高齢社会の現状を見てみましょう。決して無関係ではなく、日本の平均寿命は、

2015 (平成27 )年現在、男性80.75年、女性は91.35年です。しかし本当に気になるのは健

康寿命ではないでしょうか。健康寿命(healthy life expectancy)とは、一般的には介護を

必要としないで自立した生活ができる期間を指します。

日本人の健康寿命は2013(平成25)年時点で、平均で男性が71.19年、女性が74.21年と

なっています。

統計年の違いはありますが、男性で9.56年、女性で1.14年は日常生活に制限のある暮らし、

つまり介護を受けたり、それまでのように自由に暮らすことができなくなっているのです。

逆の見方をすれば男性71歳、女性74歳までは制限のない日常生活を送っているということで

す。

この年齢まではおそらく、健康のために適度な運動を心がけたり、食生活にも注意しておら

れる方が多いと思います。ここで介護が必要になった方たちにどのような問題が起こってい

るのでしょう。その原因を見てみましょう。   

                          
原因(%) 男性 女性
脳血管疾患(脳卒中) 26.3
12.6
心疾患(心臓病) 5.1
4.5
関節疾患 4.7 14.1
認知症 14.1 17.6
骨折・転倒 15.4
高齢による衰弱 11.1 15.3
その他・わからない 32.6 20.6





男性では脳血管疾患が1位、26.3%、2位は認知症、3位は高齢による衰弱です。女性の1位


は認知症、2位は、骨折・転倒、3位が高齢による衰弱です。ここで女性の2位の骨折・転倒


に注目してください。


 次に女性の骨折、転倒について具体的な資料をみてみます。


 東京消防庁の救急搬送データからみる日常生活の実態調査では、高齢者の事故の特徴は、


「ころぶ」事故が全体の81.5%を占めています。






高齢者の事故別構成割合(その他、不明を除く)


ころぶ
51,488人 81.50%
落ちる
6,863人 10.90%
ものが詰まる
1,703人 2.70%
ぶつかる
1,337人
2.10%
おぼれる
535人 0.80%
切る・刺さる
533人
0.80%
はさむ・はさまれる
323人 0.50%
かまれる・刺される
254人 0.40%
やけど
211人
0.30%
平成28年度 72,198人
救急搬送












また、「ころぶ」割合も年齢と共に増加しています。高齢になるまでは「ころぶ」ことが


それほど重大な事故につながるとは思いもしません。


しかし高齢になってころぶと、39%、およそ10人に4人が「生命の危険はないが、入院の必


要がある」中等症です。この入院がどれほど重大な意味をもつかおわかりでしょうか。


「ころぶ」事故の発生場所は、住居などが最も多く、次に道路・交通施設となっています。


住居などでの「ころぶ」を屋内と屋外に分けてみると、屋内の発生が九割以上を占めていま


す。そして住宅の屋内だけで、転ぶ事故の全体の五割以上を占めています。


また、住宅などで発生の多かった転んだ場所一〇か所を見ると、居間や寝室が最も多く、


次に玄関や廊下などとなっています。







「ころぶ」事故防止対策とし東京消防庁ではて次のような対策を挙げています。



・段差をなくしましょう。

・時間に余裕をもって行動しましょう。

・足元を十分に明るくしましょう。(足元灯、照明器具の設置など)

・滑り止めをしましょう(階段・廊下・玄関先など)

・歩行を補助するものを活用しましょう(手すりなど)

・継続できる、適度な運動をしましょう。

・ころぶ原因となるものは取り除きましょう(整理・整頓)




「段差をなくす」が対策にあるのは、日本の住まい特有の敷居、玄関の上り框(かまち)

などで、若いころには存在さえも気にしていなかったわずかな段差につまずくからです。

この段差の対策は「すりつけ板」を設置し、床面と敷居の段差は5ミリ以下とします。

「時間に余裕をもって」は、出かけるときなどにあわてて転んだりすることが多いからで

す。準備は早めに、ぎりぎりでなく時間の余裕を持って動くことがトラブル防止にもなり

ます。

「足元を明るく」というのは、昼間はもとより、夜間トイレに行くときに足元が暗いと転び

やすく、危ないからです。

「滑り止め」は、階段、廊下などにつけておいた方がよいですね。

「歩行を補助するもの」とは、手すりなどのことです。階段や廊下など滑りやすい、バラン

スをくずしやすい所に設置しましょう。

「適度な運動」は、体力の衰えを防ぐために必要です。

そして最後の「ころぶ原因となるものを取り除きましょう」については老前整理にとって

重要なポイントです。次の項の安全に関わるポイントの中で、合わせて考えてみたいと思い

ます。






老前整理と安全に関わるポイントは次の3つです。

1、床のものを減らす

2、高い所のものを減らす

3、どこに何がどれだけあるか、把握すること(管理)






1、床のものを減らす

 床にものがあることで転倒の危険が挙げられます。ころぶのは滑って体のバランスを崩す

ことだとお分かりでしょう。

 そのために手すりをつけることも有効です。階段や廊下、滑りやすい場所には歩行を補助

するもの、手すりの設置を考えてください。

 転んでからでは遅いのです。また「まだまだ元気だからだいじょうぶ」と思われている人

も多いでしょうが、バランス感覚は衰えていませんか。

 また「転ぶ」ことが「入院」から「寝たきり」につながる可能性もあるのです。
                                   



2、高い所のものを減らす

 天袋や、台所の吊戸棚など、踏み台に乗らなければとれない収納場所のものを減らしまし

ょう。高い所にあるものは普段使わない=使う頻度が低いものです。これからの暮らしに必

要か、一考の余地ありです。

 突然、五十肩になるなど腕が上がらなくなると、ひとり暮らしでは、人の手を借りなけれ

ば出せなくなります。

 理想は天袋に何も入っていないことです。一度には無理でしょうが、少しずつ減らしてく

ださい。また家の外にも高い所の問題があります。



庭木の手入れ

 高い所は家の中だけでなく、家の外にもあります。70代の男性Tさんの両親が、庭にたく

さんの木を移植しました。その中に15本のイチイ(一位)の木がありました。

イチイはアララギとも呼ばれる常緑針葉高木で、大きいものは高さ25メートル、直径2メー

トルに達します。赤い実がなり、建築や器具、彫刻などに使われる木です。

 90歳で亡くなったTさんの母は15年間、85歳まで脚立に上りイチイの木の剪定を続けま

した。

 その後Tさんが作業を引き継ぎ、自分も85歳まで続けるつもりでしたが、後を継いでくれ

る人がいない。この木は3年間剪定を怠ると枝が暴れて手の施しようがなくなるそうです。

そこでつらい決断をしました。

 10年後の庭を想定して15本あった木を一本ずつすべて伐採したのです。直径2メートル

もある「大木の伐採は思ったよりも大変な肉体労働で時間もかかりました。Tさんの庭のよ

うに大木がある家は少ないかもしれませんが、それでも木の剪定は必要でしょう。

 いくつまで脚立に上って作業ができるか。作業を継いでくれる子どもや家族はいるか。剪

定ができなくなった時に専門家に頼むとしたら費用がかかることも考えておかねばなりませ

ん。わたしたちは今とこれからを考える必要があるのです。



3・低いところのものが取れない

 3つ目は低いところの問題です。腕だけでなく、膝や腰が痛いと曲げられなくて床下収納の

中のものが出せないということもあります。

 また膝のせいで階段が上がれなくなり、2階に置いてあるものは使えず倉庫になってしま

ったという家もあります。

このような場合、家族がいれば、頼むこともできますが、ひとり暮らしではどうでしょう。

また夫婦が共に高齢の場合はどうでしょう。

無理をするのは危険ですね。またこれから先ひとり暮らしになる可能性もある、そうなった

場合の暮らしもどうなるだろうかと想像力を働かせていただきたいものです。



『老前整理の極意』より        
             





































                        

                                                                                                        


                                            





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