行動経済学と老前整理1

【行動経済学との出会い】


 はじまりはコンビニ弁当から

 行動経済学では2017年にリチャード・セイラ―がノーベル経済学賞を受賞していますが、私は学者ではありません。経済学を学んだこともない!

 にもかかわらず、どのような経緯で行動経済学と老前整理を結び付けたのか? 

 かけ離れたものをいかに結びつけるか。たぶんこの点がオリジナルで私にしか語れないことだと思います。そこで、素人の私がなぜ行動経済学に惹かれたのかというサイドストーリーに興味がありませんか。

と勝手にガッテンで、このあたりの話をしましょう。

アーウィン・ショーの小説に『はじまりはセントラル・パークから』があるのですが、私の場合、「はじまりはコンビニ弁当から」となります。

 3〜4年前でしょうか、たまたま見ていたテレビで、セブンイレブンの会長(当時)が自社のコンビニ弁当の試作品を1品1品チェックして、販売するか否かを決めておられました。

 私が驚いたのは、多忙な会長が膨大な試作品のチェックをしておられることと、ご自分の「舌」に自信を持っておられることでした。

 味覚は一人ひとり違います。料理の専門家ならともかく、会長が自ら味見をして決める…そのこだわりに、面白い方だなと興味を持ちました。そこで著書を読みました。

『鈴木敏文の実践!行動経済学』(2012年 朝日新聞出版)この本で経済学とは無縁の私が初めて行動経済学という言葉を知ったのです。(鈴木元会長に感謝!)

そして次に読んだのがこの本。マッテオ・モッテルリーニ、泉典子訳『経済は感情で動く』紀伊國屋書店

 この本は2008年出版ですが、帯には鈴木会長のお名前が出ています。(当時は今より行動経済学の本は少なかった)

この本は質問というかクイズ形式で具体的な問題をわかりやすく取り上げています。

一気に読んで、これは面白い、もっと知りたい、漠然とですが、私が探していた「答え」は行動経済学にあるのではないかと思いました。

整理や片付けと行動経済学は連想しにくいと思います。ところがこれが、ぴったりなのです。

 行動経済学は、従来の伝統的経済学では例外とされてきた現象を心理学の研究から説明するべく理論化したもので、1979年にダニエル・カーネマンとエイモス・トヴェルスキーにより提唱された「プロスペクト理論」からです。

 この理論は、不確実な状況下での人間の行動を解明するためのものです。人間は合理的であると同時に不合理な存在である。つまり経済と心理学が融合したものです。

2015年にこの理論を知り、「これだ!」と思いました。

コロンブスの卵のごとく、つながれば「なーんだ、そうか」と多くの人が納得できるでしょうが、この理論にたどり着くのに試行錯誤を繰り返しました。

専門書を読み、理解し、老前整理に向けて咀しゃくするのに時間がかかりました。

 なぜこれだ!かというと、私はずっと、「なぜ不要なものが捨てられないのか」を考えあぐね、その答えが行動経済学にあったからです。

 この事を2018年4月から3ヶ月担当したNHKラジオ第2「こころをよむ」全12回の3、4、5回の3回にわたってお話しました。(放送は終了テキスト『老前整理の極意』) また事前に講演会で調査もしました。

行動経済学と経済学は違うのか?

 ここでまず素朴な疑問の解決から。今までの「経済学」と「行動経済学」はどう違うのか。経済学では「人間は必ず合理的な経済行動をするもの」という前提がありました。

 正直なところ、経済学のけの字にも縁のなかった私にはまずこのことが、驚きでした。なぜなら私の日ごろの行動は、不合理、非合理の連続だからです。(笑わないように)

 私事はさておき、行動経済学は「従来の経済学では説明しきれない人間の経済行動を人間の心理という観点から解明しようとするもの」です。

プロスペクト理論

 ダニエル・カーネマンとエイモス・トヴェルスキーの「プロスペクト理論」の話。

(プロスペクトは期待、予想、見通しなどの意味)

この理論は様々な行動経済学の考え方の基盤となっています。

 プロスペクト理論は「価値関数」と「確率荷重関数」という2つの考え方により構成されています。関数の話にはグラフを用いますが、ここでは簡単にまとめると、「不確実な状況において、人はどのような予測を立てて行動するか」を説明した理論です。

「価値関数」は価値判断の傾向で、結論から言えば、私たちは同じ量の損と得を比較した時に、損の方を約2倍も重大に感じてしまう傾向があります

「確率加重関数」とは、発生する確立によってリスクを回避するか積極的に追及するか変化してしまうという考え方です。本来、確率というものは〇%という客観的なものですが、利得と損失が係る状況になると、主観的な評価が入り非合理的な判断をしてしまうことがあるのです。

(参考 佐藤雅彦、菅俊一『ヘンテコノミクス』マガジンハウス)          




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